プラスチックの射出成形「金型の基礎知識」について整理してみました。(わかりづらい専門用語があるかもしれませんが、プラスチックの用語を参考にしてください。)
【金型の役割】
プラスチックの基礎知識にある様に射出成形の原理は「①材料(ペレット)を加熱して溶かす」⇒「②溶けた材料を金型に流し込む(射出)」⇒「③冷やして固める(冷却)」⇒「④金型から製品を取り出す(離型)」の4工程からなります。
上の4工程の内で「①材料(ペレット)を加熱して溶かす」については、成形機の加熱シリンダーで溶かしますが、②~④の工程では全て金型が必要になります。
[射出成形機の構造]
射出成形機は材料投入口(ホッパー)から材料を入れて、加熱シリンダーで材料を熱して溶かします。溶けた材料はスクリュー駆動装置で必要な製品分の材料を計り(計量)、スクリュー押出シリンダーで材料を金型内へ流し込みます(射出)。
[金型の基本構成]
金型は雌型(キャビティ:固定型)と雄型(コア:可動型)から構成され、パーティングライン(PL)で分割されます。
製品は雌型(キャビティ:固定型)と雄型(コア:可動型)のすきまの空間部で作られます。
金型内で溶けた材料を冷却してすばやく固めるために冷却水路が設けられます。
【射出成形の金型の重要ポイント】
①寸法精度が高いこと
成形品の寸法公差に対して金型精度は1/6とされる。金型は高い圧力(400~800kgf/㎠)が加わるため、変形や位置ずれを寄りどめ(いんろう)をつけて防止する。金型の寸法修正は基本的に金型を削る方向で修正できるようにあらかじめ考慮しておくとよい。
②故障しにくいこと
シンプルで単純な構造で丈夫にすること。そのためには、可能な限りアンダーカット形状(型開方向だけで金型から抜けない形状)等は少なくして、スライド等の摺動部は摩耗(カジリ)や破損なきように動きをよくする。
③製品がよく冷えること
成形品を金型内で短時間に効率よく冷やすために製品部周辺に金型の冷却水路を配置する。冷却効率の良い金型はサイクルタイム短縮につながりコスト低減の効果も期待できる。
④製品がスムーズに抜けること
製品部の金型のミガキをよくすることで離型性を向上する。また、必要によって抜きテーパ(例えば1°程度)をつける。 離型性の悪い金型であると製品にカジリ傷がついたり変形等の原因となる。
⑤製品部の空間からガスが抜けやすいこと
金型内にエア(あるいはガス)が抜けないと不良(欠肉やガス焼け)等のトラブルの原因となるために、適切な部位にガス抜き(ガスベント)を配置すること。
【金型仕様の決め方】
①金型のサイズ(大きさ)
金型を取り付ける成形機仕様(取付可能な金型寸法)を基準として、必要な金型強度(小さいと剛性不足による不具合や冷却不足等が発生)も合わせて決める。
②パーティングライン(PL)位置
パーティングライン(PL)は極力単純な直線がよいが、キャビティーとコアのバランスや突出ピンの配置等も考慮して決める。
③突出ピン位置
突出ピンの跡が意匠面にないか等を事前に客先に承認していただくこと。また、製品を均等な力で突き出せるようにバランスよく配置してピンの太さや形状も決める。
④ゲート種類と位置
ゲート種類(サイドゲート、ピンゲート、サブマリンゲート等)とゲート位置はゲート処理跡が外観に影響を与えるため、事前に客先に確認する。
また、ゲート位置は材料の流れ方や不具合(ウエルドライン、フローマーク、ガス焼け等)に影響を与えるため、過去の実績や流動解析結果等の成形性も含めて総合的に判断する。
⑤入子構造
金型はすべて一体構造でできない形状もあるが、入子の境界ラインは外観不良になる場合もあるため客先に確認が必要となる。また、入子の境界線はバリやグイチ(段差)の原因になりやすい。ただし、入子構造は入子の交換により保守がしやすい場合もある。
【金型構造と金型動作】
実際の金型の簡単な構造となります。
[金型構造]
金型が閉じている場合と開いた場合を図示したものです。
[金型開閉・突出動作]
①金型は可動型が型開動作を開始してパーティングライン(PL)で固定型と分割されて開きはじめます。
②金型が型開完了すると成形機のエジェクタロッドが動作して製品の突出ピンにより製品を突出します。
③金型から製品の突出完了後にエジェクタピンが元に戻り金型が再び型締めをします。
*①~③の動作(1サイクル)を繰り返します。
(出典・参考文献)
「射出成形・金型マニュアル」工業調査会 青葉堯
「射出成形金型トラブル解決100選」工業調査会 青葉堯
「射出成形作業ここまでわかれば一人前」日刊工業新聞社 榊原充