◎FM(フォースマジュール)宣言の影響

最近、プラスチック業界、特に自動車向部品において切実な課題となっている『FM(フォースマジュール)宣言』について、少し話をしたい。

 

一般の方には、フォースマジュール宣言と来てもピンとこないかもしれません。

 

フォースマジュールとは、不可抗力を意味する言葉で、不可抗力によって債務不履行(材料、部品が納入できないこと)が起こったときに、製造メーカが責任の免除を求めることを言います。

 

フォースマジュール宣言を、今年2月に東レがプラスチック樹脂材料、特にPA66(ナイロン66)で、原料製造の元となるアジポニトリル(ADN)の供給不足が原因で、必要な材料数量が確保できず、フォースマジュール宣言、いわゆる出荷免責宣言をしました。

 

出典:DSM

 

実際には、PA66(ナイロン66)だけにとどまらず、それらの代替材にも影響が出てきており、さまざまな材料で価格の高騰や材料の供給不安が発生し、それに伴う自動車部品、電子機器部品の減産などに波及しかねない状況となってきている。そして、このような状況は夏場以降まで長期化するとの見方があります

 

今後、地震、災害、火災、暴動、さらには今回のような新型ウイルスなどのリスクが、ますます増えることになりそうで、FM(フォースマジュール)宣言が日常茶飯事になってもおかしくないでしょう。

 

それぞれのメーカは、サプライチェーンで守られてきた側面がありましたが、FM宣言が増えてくるとこれらのシステムが破壊されます。こうなった場合は、力のあるメーカが、物量、パワー競争で材料を確保する、いわゆる争奪戦が激化することになりかねず、価格の異常高騰、便乗値上げなども発生することでしょう。

 

サプライヤーにとって、原材料が手に入らないことは、顧客に製品を納入できなくなり、また、材料価格の急騰も製品に価格転嫁できないと不採算になりかねませんから、深刻な事態とならないように早く正常化してほしいものです。